実データ 統計

ゆとりある老後生活費月額の平均は34.9万円というデータの大本をたどってみたよ

投稿日:2019年2月6日 更新日:

てん@統計屋さんです。

みなさん老後の資金計画はいかがですか?

我が家では、余裕のあるお金を贅沢に使いすぎないよう、強制的な貯蓄の仕組みをいくつか組み合わせて、準備しています。

先日は、個人年金の話を聞きに保険の窓○に行ってきました。そこで、FPさんからは

[word_balloon id=”10″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” name=”” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]ゆとりある老後生活費月額の平均は34.9万円という調査があります[/word_balloon]

との説明を受けました。

ここで、貯蓄系のブロガーであれば

家庭ごとに前提が異なるから自分の生活に合わせて算出しましょう!

スリムな生活を実現しておけばこんなに必要ない!

足りない分をどのように補うか!

みたいな考察をまとめるのですかね?

そんな記事は山とあるようですし、そんなこと(失礼)よりも私は大いに気になることがあります。

[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”think” name_position=”under_avatar” name=”” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]いや、このデータは信用できるの?[/word_balloon]

さて、データを見てみましょう。

ゆとりある老後生活費月額の平均は34.9万円 のデータを見てみよう

データの出処

FPさんに見せていただいた資料には34.9万円が必要!のデカデカとしたアオリの横に、申し訳程度に出展が付いているのを見逃しませんでした。

出展:生命保険文化センター 「平成28年度 生活保障に関する調査」

プレスリリースを見てみると

この調査は、人々の生活保障意識や生命保険の加入状況をはじめとした生活保障の準備状況を時系列で把握することを目的に、3年ごとに実施しています。

・・・

(1)ゆとりある老後生活費は月額34.9万円(P3)

という記載を発見。FPさんの見せてくれた資料は、間違いなくこの調査結果を引用していると考えて良いでしょう。

平成28年度の調査データ(次回は2019年度に実施)ということなので、新鮮さと言う意味では文句を付けるようなデータでは無さそうです。

データが偏りそうなポイント

では、データをチェックして行きましょう。

調査者はフェアな存在か?

生命保険文化センターのサイトを見てみると、その活動の目的は

生命保険制度の健全な発展のための諸事業を通じて、国民生活の安定向上、国民の利益の増進に寄与することを目的とする。

となっています。決算を見てみると収益の大部分が会費とのことで、会員を調べてみたら、国内で活動する生命保険会社の一覧にたどり着きました。評議員に連ねている方々も、半数程度が生命保険会社のボードメンバーのようです。

つまり、生命保険会社が組織した業界団体。と考えて差し支えなさそうです。利益相反の面からは、生命保険商品(特に今回の場合は年金保険)の販売に有利なデータを積極的に集めているかもしれないという点に注意が必要そうです。ただし、会員会社が十分多く、特に外資などを除外している様子もありませんので、特定の固有名詞のついた商品に有利なデータを積極的に報告するということは考えにくいです。

抽出は無作為か?

・調査地域
全国(400地点)
(ただし、熊本県は地震の影響により、大半を隣接県に振り分けて調査を実施)

・調査対象
18~69歳の男女個人

・回収サンプル数
4,056

テン抽出方法
層化2段無作為抽出

・調査方法
面接聴取法(ただし生命保険・個人年金保険加入状況部分は一部留置聴取法を併用)

・調査時期
平成28年4月2日~6月3日

という記載をサイトから発見できました。ある程度適切な施策がなされています。

ただじ、回答人数は、男性1,746名、女性2,310名とやや偏りがあることから、完全に日本全国の18~69歳男女を代表するデータではなく、こういたアンケートに回答する程度に資産に対する意識・関心の高い方、アンケートに回答する時間的・精神的余裕の在る方に偏っていそうです。

確定的なことは言えませんが、例えば「専業主婦の回答が日本の実態の平均よりも多いかもしれないので、シングルインカムでやりくりしている比較的節約できている家庭の回答が多く反映されているかも?」みたいな視点は持っておいても良いかもしれません。

[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” name=”” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]既婚者割合などは報告書にあったので、他の公共データと見比べるともっといい考察できそうだけど、一旦このあたりで限界・・・[/word_balloon]

解答は客観的か?

大問題発生です。質問票の文言を転記すると…

Q17 ところで、あなたは、老後を夫婦2人で暮らしていくうえで、日常生活費として月々最低いくらぐらい必要だとお考えですか。現在のお金の価値でお答えください。

SQ1 それでは、経済的にゆとりのある老後生活を送るためには、今お答えいただいた金額のほかに、あといくらぐらい必要だとお考えですか。現在のお金の価値でお答えください。

となっています。”ゆとりある老後生活費は月額34.9万円”はこれら2つの質問の平均値の合計としてレポートしているわけです。平均値の合算そのものは特に問題ないと思いますが、その大本となるそれぞれの質問は回答者は全く根拠なくあるいは各々思い思いの根拠で回答していることになります。また金額を空欄にして「ゆとりのある老後生活を送るつもりはない」「わからない」という回答も可能な回答票になっていました(必要額の方で「わからない」を回答すると、ゆとりのある生活に必要な額は質問もされない構造です)。金額を書かなかった(「わからない」と回答した)方々をどう集計に反映させたのか、チェックが必要そうです。

そもそも平均は正しい?

単純な平均値の計算を間違えている。そんなことは流石に疑っていません。重要なのは2点、「わからない」「ゆとりのある老後生活を送るつもりはない」をどう処理したか?それは妥当か?「平均値」は代表値として妥当か?チェックしなくては。

[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” name=”” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]「わからない」の処理手順

これはサイトを見ても記載が見当たりません・・・。諦めます。[/word_balloon]

[word_balloon id=”9″ position=”R” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” name=”” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]あっさりやな、もっと頑張れや[/word_balloon]

[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” name=”” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]がんばります[/word_balloon]

個別データはダウンロードできないようですが、幸い区分の割合データは公開されていますので、多少のことは出来そうです。

下から、「45-50万円未満」の各グループの平均はおおよそ中央の値(20万円未満なら「10万円」、35-40万円未満なら「37.5万円」)だと考えて見ます。

「50万円以上」のグループの平均がどの程度か・・・その予想はとても面倒ですが、仮に最低値=50万円として。加重平均を計算してみました。

「わからない」を分母に入れない場合→加重平均は35.3万円

うん?最低値を仮で入れているのに発表の値より大きくなってしまいました・・・

いろいろ仮定を変えて考えてみたのですが。次の結論が結局シンプル

「わからない」は0円として計算→加重平均は34.9万円

ちなみに、「20万円未満」は16万円、「50万円以上」は94万円を各層の平均としてます。

実際の集計手順は分かりませんが、「わからない」という回答を0円と仮定して矛盾ない計算が出来てしまいました。もしこれが真実なら

よゐこしか真似しないでください

というキャプションを付けないといけないような生活をしてる方が一定数いることになってしまいます。相当に過小評価ですね…

加えて、「50万円以上」の層の平均が94万円というのも、流石に高すぎる気が・・・

いまのところ、これだ!という解答は見つかりません。気が向けば改めて確認していこうと思います。

参考になりそう?

最大の問題は、この調査の回答がかなり主観に委ねられていることです。「お金を使っていないつもりで浪費している人」「とても保守的に高い数値を書いた」が、割合不明で混ざって平均値が出ています。多くの方の主観を平均化すると、ある一人の直感よりはマシな数値が得られることはしばしばあります。ただし、その数値がバイアスを持たないことはほぼ不可能です。確かにあなた一人が直感で金額を決めるよりは確からしい。しかし、高い精度を期待するものではない数値。と考えるとちょうどよいかと思います。

この手のお金に関する統計では、平均値より中央値の方が実感に近いことがよく起こります。平均値の算出ルールはよくわかりませんでしたが、幸いにしてカテゴリの分布はわかりますので、おおよその中央値は確認できそうです。

本当に必要な額を知るには?

このデータに行き着いた方は、自身の主観で考えるより客観的な根拠を求めてるわけですよね。(私もそうです)

ある程度、このデータも参考にはなります。特にサイトに詳細データを見に行くと、男女別に、年齢別、婚姻状況別、住宅状況別、年収別の分布データが取得できますので、自身の状況に合わせて確認してみると良いと思います。

例えば、男性で大企業のサラリーマンである私の場合、

「35~40万円未満」の層が中央になりますので、FPさんに言われた34.9万円では気持ち物足りないかもしれません。

ただし、やはりこれは主観的な回答の集計に過ぎません。客観的なデータでの算出に付いても今後検討していきますので、続報をお待ちください。

最後に

[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” name=”” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]老後資金に困ること考えるより、まずは健康に長生きしたいですわ[/word_balloon]

でわでわ

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