統計

AIに仕事を奪われないために必要な能力って何か考えてみたよ

投稿日:2019年7月26日 更新日:

てん@統計屋さんです

AIによって仕事が奪われるのでは?そんな話題を耳にするようになって久しいです。

最も有名なのは、2015 年 12 月 2 日に野村総研が英オックスフォード大学との共同研究で発表した日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に~ 601 種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算 ~という発表ではないかと思います。

この結果、10~20 年後に、日本の労働人口の約 49%が就いている職業において、それらに代替することが可能との推計結果が得られています。

ということなので、今20~30代の方にとっては回避できない時間軸で約半数の方の仕事が人工知能やその他の技術で代替されてしまうということのようです。

てんも他人事じゃないやんね

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くまひろ

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てん

日々戦々恐々です

AIに仕事が奪われないためには何ができるようにならないといけないのか?少し統計屋視点で考察してみました。

AIとは何か?

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てん

逆に私が聞きたいぐらいです

というのは、AIという言葉は文脈次第でその意味が全く異なるからです。

汎用AI

人間がAIを改良する速度を超えてAIを改良するAIが登場したとき、AIは人類の手を離れると言われ、その時をシンギュラリティ(特異点)と呼びます。

皆さん休んでてください AIはぼくがつくりますので

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汎用AI

この文脈で出てくるAIは『汎用AI』と言われるものです。鉄腕アトムやドラえもんなんかがいわゆる『汎用AI』と思ってもらってよいかと思います。これらは現在存在していませんし、今のAI技術の延長線上に存在しているかも怪しいと言われています。シンギュラリティは2045年に起こる、なんて話もありますが、裏返せば25年はとんでもない『汎用AI』は登場しないと考えて良さそうです。

え?ぼくはまだ生まれそうにないの?

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汎用AI

データアナリティクスAI

ディープラーニングなんかも含めた機械学習技術群をここでは『データアナリティクスAI』と呼ぶことにします。よく考えれば、古典的な頻度流の統計的推定(単純な直線回帰とかね)も『データアナリティクスAI』の仲間といえます。センサーの発達・IoT技術の発達などによって「分析対象のデータ量が増えたこと」と、コンピューター技術の発達によって「マシンパワーに頼った解析ができるようになったこと」の相乗効果によって、過去ありえなかったような分析が現在実装されてきていますが、その本質は特に変わっていません。

最適化AI

囲碁や将棋のAIは『最適化AI』と言って良いと思います。

「勝利に向かって最適な手を決める」作業をしていますから。「最適な配達ルートを決める」「最適な投資ポートフォリオを決める」「最適な・・・」「最適な・・・」それらが『最適化AI』のターゲットです。これも、古典的にはニュートン法などの手法に始まり、メタヒューリスティクスによる方法などと発展してきました。

自動化AI

『自動化AI』はある意味最もイメージしやすいと思います。自動運転などのように、「勝手にやっといてくれる奴ら」です。

これもよく考えてみれば「光を当ててみて、粒の影があったら血卵であるので廃棄」みたいな技術として結構以前より存在はしていますね。他にも、「ポテトチップスを規定重量測って袋詰する」なんての『自動化AI』の仲間でしょう。

通常、AIは単独ではない

現在『AI』と呼ばれてその成果をもてはやされているものは、未だ存在しない『汎用AI』を除いた『アナリティクスAI』『最適化AI』『自動化AI』の複合的なものです。そりゃそうですよね、「分析」して→「最適化」して→「自動」に動く、その結果をまた「分析」に返す。というのが自然な流れだと思います。

我々の仕事を奪うAIはどいつ?

まだ存在しない今後もまだしばらく存在しそうにない『汎用AI』は気にしなくていいでしょう。『データアナリティクスAI』や『最適化AI』はそのものが我々の仕事を奪う存在ではありません。どちらかといえば、我々にインサイトを与えてくれるパートナーです。使いこなせないことは問題かもしれませんが・・・
つまり、仕事奪いに来るAIは『自動化AI』といって良いと思います。「自動運転でタクシードライバーはいらなくなる」「工場が自動化してヒトが働いていない」・・・・

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てん

しかし、『自動化AI』は他のAIと複合して動いている、この点は重要なポイントです

AIは何が出来ないの?

ここまでで、我々の仕事を奪いに来るのは『自動化AI』と特定しました。なので我々がAIに仕事を奪われないためには『自動化AI』の苦手そうな仕事をすればいいと考えられます。『自動化』の難易度について、センサー技術(インプット)やロボット技術(アウトプット)からの評価をすることは私には出来ませんが、その間をつなぐ『アナリティクス技術(AI)』の苦手なことならいくつか指摘ができそうです。

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てん

『アナリティクス』などと言葉は仰々しいですが、要は統計的推測の延長線上の技術ですからね

実際にはこれから説明する「限界」を解決する研究・取り組みはいろいろあるんや!でも苦手なことには間違いないやで

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くまひろ

未来は予知できない

これに付いては、すでにそこそこ詳しく記載しましたので、その記事へのリンクのみとします。

想定外を予想できない

未来を予想できない理由の一つである『外挿』の問題です。想定外であるというのは言い換えれば、これまでに例がない(あってもわずか)という状況ですので、機械にとっては学習したくても学習するデータ(事象、過去事例)そのものがありません。

データが多くないといけない

レコード数がそもそも30しかない・・・そんなものに隠れたインサイトも何もあったもんではありません。機械学習的な分析アプローチではその精度保証のために、クロスバリデーション(データを学習用と評価用に分割して、評価用データで正答率などを確認する)を行うことが多いのですが、30レコードしかなければ、データを分割している場合ではないです。とてもノイズの少ない、かつバラエティに富んだデータでも学習のためのレコードは100は最低限必要です。

ラベル(目的変数)が定義・測定出来ないと行けない

目的変数というのはその名の通り、推測したい目的の数値・区分です。天気予報であれば「明日の『雨』or『晴れ』」といったことを推測したいわけですので『雨』や『晴れ』という『天候区分』の情報が目的変数となります。機械学習においては、「今日の『天気図』」と「明日の『天候』」の組を大量に用意し、「どのような天気図がだと翌日雨が降るか?」ということを学んでいきます。

だとすると、目的変数のデータが入手できない場合、機械学習に必要なデータが全く無いという事態に陥ります。例えば、「各顧客の購買行動を分析しよう!」と言いながら「各顧客の購入履歴」を保有していなければ、どうしようもありません。どこの小売業も躍起になってポイントカードを作るのは、まさに「各顧客の購入履歴」情報を入手するためですね。この例では、コストを掛ける(ポイントカード運営をする)ことで、目的変数を入手できましたが。コストをどう掛けても入手できない目的変数には対策が打てません。

 

測定できないのも問題ですが、目的変数の定義が難しい場合も問題です。例えば、「顧客満足度」を目的変数にしたいとします。

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てん

さて顧客満足度ってなんなんでしょうね?

すぐに説明できる方はいるでしょうか?漠然としたイメージはあると思いますが、絶対に万人に合意を得られる説明(定義)は出来ないのでしょうか?この例の場合なら、

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てん

「契約期間の長さ」を代わりに使いましょう!

みたいなことで十分代替可能ですが次の例はそうは行きません。自動運転における目的変数は何でしょうか?

「目的地に付く早さ」ですか?

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自動運転AIくんA

僕は誰よりも早く目的地に付くでしょ!途中信号を何回か無視したけど、そんなこと気にしないよね?!

「絶対に事故を起こさないこと」ですか?

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自動運転AIくんB

僕は絶対事故を起こさないよ!だって動かないからね!

おそらく「事故を起こさず安全にかつ早く目的地に付く」が目的変数なのですが、それをAIに分かる言葉に定義してあげることはかなりな難易度となります。

AIに奪われない仕事・能力とは

さてこれらの前提から、AIに奪われない仕事というか能力を考察してみます。

それは簡単な単語で言えば『想像力』ということになると思います。

  • AIは予知が出来ないので、今後5年後10年後先に何が起こっているか何が必要とされているか想像する仕事は奪われません。
  • AIは想定外を想定できないので、想定外を想像し想定する仕事は奪われません
  • AIはデータが少ないと何も出来ないので、前例の少ないことから想像出来る能力は代替されません。
  • AIは目的変数が定義・測定されていないといけないので、定義や測定の難しい目的に向かう道筋を想像出来る能力には敵いません。

更に上をいく能力は『創造力』です。

  • AIは予知が出来ないので、今後5年後10年後の将来に変革を起こすような創造をされると手も足も出ないどころか、AIにとっちゃいい迷惑です。
  • AIは想定外を想定できないので、想定外を創造しわざとそういった事象を起こすとようなことをされると、AIにとっちゃいい迷惑です。
  • AIはデータが少ないと何も出来ないので、データを創造(捏造はだめですよ)する作業をしてくれれば、むしろAIにとっては感謝してもしきれないです。
  • AIは目的変数が定義・測定されていないといけないので、ヒト言語でしか説明できない目的からAIにわかる定義を創造する仕事が、AIにとっては欠かせません。

今後データサイエンティストを名乗る方は、「AIの言語での定義を創造する」能力は必須で磨かないといけないです。

この観点で日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に~ 601 種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算 ~にある”人工知能やロボット等による代替可能性が低い 100 種の職業”を眺めてみるといろいろ納得できると思います。

世の中にまだない新しいものを提供する音楽・映像・漫画・文章・衣服等の創作を行う方が多く生き残れるようです。あるいは、対面での価値提供を行うコンサルタントやサービス業も生き残れそうです、これは統計的推測が十分に力を発揮できるほど1to1のビジネスの分析にはデータが足りていない側面があるのだろうと想像します。

今回の考察の範囲外としては、細かい作業を求められる職業も生き残るようです。これは統計的推測の限界に関連したことではなく、ロボティクス(アウトプット)の限界の問題かなと思います。

まとめ

AIに仕事を奪われないためにどのようなことが出来る必要があるか、AIによる統計的推測の限界を基に考えた場合、未来の世界の『想像力』『創造力』が武器になることが分かりました。

これらの能力をどうやって成長させればいいのん?

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くまひろ

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てん

それ自身が過去を参考にせず『想像』して『創造』しないといけないと行けない気がしますので、なんとも答えにくい

この記事の結論はすごくありきたりですが、そこに行き着く考察を知ることが理解を深めるので、読み飛ばした方は改めて読んでいただけるとありがたいです。

でわでわ

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