統計

統計関連の学会が発表した声明を紹介するよ

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日本計てん@統計屋さんです

日本統計学会が声明を発表したというニュースが(ごく狭い範囲で?)駆け巡りました。

毎月勤労統計調査に様々な不正(意図的かどうかに関わらず)があったことに対して、落胆の表明と再発防止への助力の申し出をされています。

たまにではありますが、統計関連の学会は世間全般に、正しい統計の利用を促すべく声明を発表しています。

これらの声明は統計家向けではなく広く一般向けに書かれていますし、2ページ程度の短い文書となっていますので統計に興味のある方には一度読んでみてもらいたい文書になっています。

[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]というわけで、ここ何年かに発表されたいくつかの声明を紹介したいと思います[/word_balloon]
[word_balloon id=”9″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]興味が出たらぜひ読んでみてね[/word_balloon]

日本統計学会︰厚生労働省毎月勤労統計調査に関する声明

この記事を書くきっかけとなった声明です。

[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]正直なところ、日本統計学会がこういった声明を出す事を全く想像していませんでした[/word_balloon]

少なくとも直接名指しで来ると思っていませんでした、やっても一般論としての声明に留めるのかと…

相当にお怒りの様子が伺えます。

声明の趣旨は、冒頭数行にまとまってますので引用します。

今回、厚生労働省毎月勤労統計調査において不適切な調査が行われていたことが発覚した。信頼性の高い公的統計の提供のために、政府において原因が究明され、その結果が公表されるとともに、再発防止策が講じられることを強く希望する。原因究明と再発防止策の検討の過程において、求めがあれば、専門的な見地から本学会が協力することを表明する。

再発防止を徹底しろ!協力は惜しまん!という強いメッセージになっています。

一方で、特定の政党に対する忖度があった等の推測は一切しておりません。忖度があったのなかったのということに寄らず、レッドカードを突きつけるべき状況であった事が読み取れます。

毎月勤労統計における不適切な調査・公表状況の発覚は公的統計の信頼性に深刻な打撃を与えた。過去には信頼性が国際的にも評価されていたわが国の公的統計ではあるが…

なぜ、声明を出すに至ったのかが、この引用部分に現れていると感じます。

声明は以下の文で締めくくられます。

再発防止策を講ずるに当たり、統計法の背後にある基本理念が統計作成の現場で徹底されることを強く要望する。

社会に対し常に中立である(基本理念中の基本理念)はずの統計が、その中立性に疑義がかかった。その時点で、統計は(公的という単語はあえて外します)責任を果たせていないことになります。統計学会としては、そういった基本理念すら現場から消え失せてしまった可能性を強く危惧しているのでしょう。

[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]政治にあまり関心のない私ですが、この声明を見て事態を調べ始めたので、そういった効果もこの声明にはありそうです[/word_balloon]

[word_balloon id=”9″ position=”R” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]そうかもな

声明文はこちらです[/word_balloon]

アメリカ統計協会︰統計的有意性と P 値に関する ASA声明

ASAってのは、アメリカ統計協会(American Statistical Association)の略字表現です。

以前の記事でも紹介した有意病患者ですが、学術誌の編集者・査読者レベルにすらその罹患患者が増えすぎていることに対して、p値偏重な学術会への懸念とp値の正しい理解の説明をしています。

[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]非常に内容が良いので、研究で検定というツールを使う方全員に読んでいただきたいです[/word_balloon]

[word_balloon id=”9″ position=”R” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]この程度も分かってない査読者は著者に検定関連のコメントする資格無いやろ[/word_balloon]

[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]それは言い過ぎ・・・でもないかも・・・[/word_balloon]

原文は英語なのですが、和訳を計量生物学会が出しています。

和文版の結語の最後の

ひとつの指標が科学的推論の代わりとはなりえない。

この一文がすべてを表しています。

p値が0.05以下でないとだめだ!

p値を用いるべきではない!

どちらに対しても撫で切りです。

[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]p値は多くの指標の1つに過ぎない!ここテストに出します![/word_balloon]

[word_balloon id=”9″ position=”R” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]だれがそのテスト解くのさ?

声明文はこちらです(和文)[/word_balloon]

計量生物学会︰臨床研究に関する日本計量生物学会声明

これはディオバン事件(知らない方はWikipediaを読んでね)を受けての声明です。

日本計量生物学会は生物に関連するデータ(多くは人の健康に関するデータ)に対する統計を扱っている学会です。当然ながら医薬品の臨床研究に関する統計はコアとなる領域というわけで、臨床研究の統計解析に関する不正に黙っていられなかったために(加えて、学会に所属する統計家を守るために?)声明を発表しています。

「適切な資格と経験を併せ持つ生物統計専門家」は、単に臨床試験の統計業務に長けているのではなく、臨床試験そのものに関する専門家でもあり、このような専門家が参加していない臨床試験には科学的に問題があるものが多い。現在、社会的にも大きな問題となっている「高血圧治療薬の臨床研究事案」はその一例に過ぎない。

というわけで、かのディオバン事件は「適切な資格と経験を併せ持つ生物統計専門家」不在で実施したことが根本原因であるとしています。

少し言い換えると、刑事告訴までされた(後に無罪判決:事実は認定されるも、条文に適用出来ないとの判決)統計担当者に対し、「適切な資格と経験を併せ持つ生物統計専門家」ではない!と言い切ったわけですし、「(当学会が認定する)適切な資格と経験を併せ持つ生物統計専門家」が関わっていればこんな事件は起らなかったはずだ。と言っているわけです。

[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]この記事を書く過程で知ったけど「適切な資格と経験を併せ持つ生物統計専門家」を認定する制度もあるみたい[/word_balloon]

[word_balloon id=”9″ position=”R” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]この事件の中心にいた統計担当は、その認定を受けてないってことか[/word_balloon]

計量生物学会はこの声明と同時に「統計家の行動基準」という文書もを公開しています。

この文書の作成の目的は、大きく

統計家に対して:職業倫理を改めて理解させる

統計家の雇用者等に対して:雇った統計家が、企業の利益よりも公益を優先する存在であり、そのことで彼らを不当に扱わないことを依頼する

の2つが背景にあったように読み取れる内容です。

全般に渡り非常に良い内容なのですが、”声明”本文ではないので、私の中で特に響いた文章を一箇所のみ引用させていただきます。

各人の能力は、受けた教育・訓練や資格によっても異なるが、業務は、自らの力量の範囲内で行う。自らの力量を超えた業務により社会に不利益をもたらす可能性があることを自覚する。

[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]肝に銘じます[/word_balloon]

[word_balloon id=”9″ position=”R” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]おまえ結構やらかしてるもんな![/word_balloon]

[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]・・・[/word_balloon]

[word_balloon id=”9″ position=”R” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]声明文と行動基準はこちらです[/word_balloon]

おわりに

統計学はなんとなく数字・数学の世界の話という印象を持つ方もいると思いますが、実社会で使われてナンボの存在です。それが故に、統計の誤用・悪用が実社会に負の影響を与えていることが明らかになった際、統計家のコミュニティーは大きく声を上げます。

[word_balloon id=”1″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”true” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]激おこぷんぷん丸![/word_balloon]

でわでわ

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