統計

あなたはいつまで働きたい?-アンケートは母集団を見ないと行けないよという話をするよ-

投稿日:2019年6月14日 更新日:

てん@統計屋さんです

最近通勤時間に、こんな会話が聞こえてきました。

「働けるうちはいつまでも」働きたいヒトが約4割もいるんだって

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サラリーマン1

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サラリーマン2

え~定年でスパッと仕事やめたいよ~

俺も俺も、でも世の中には仕事大好き人間が思ったより多いんだな~

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サラリーマン1

パッと見、20代の社会人数年目の若手という感じのお二人でした。

私としては、”定年でスパッと仕事やめたい”発言に激しく共感しつつ

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てん

「働けるうちはいつまでも」働きたいヒトが約4割ってどこのデータだろー?

と思っていました。

 

”「働けるうちはいつまでも」が4割!”の元データ

平成29年版高齢社会白書

そのお話をしていた本人に聞いたわけではないですが、間違いなくこれかな?というものは見つけました。「平成29年版高齢社会白書」の「4 高齢者の就業」が該当するかなと思います。

https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/zenbun/s1_2_4.html

2)高齢者の就業状況
ア 「働けるうちはいつまでも」働きたい高齢者が約4割

まず間違になくこれやろ

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くまひろ

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てん

この高齢社会白書は、いくつかの調査を取りまとめているようで、平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査結果の引用のようですね

上記のリンク先から、アンケート帳票そのものなども確認できます。

高齢者の日常生活に関する意識調査は平成29年度版も概要が既に出てましたが、平成26年度のデータと同様のアンケートの結果は見つかりませんでした。

高齢者の日常生活に関する意識調査

さて、この調査を解釈する上で重要なポイントを押さえておこうと思います。

2 調査対象者、調査事項、調査方法等

(1)調査対象 全国の 60 歳以上の男女 6,000 人
(2)調査方法 郵送配布・郵送回収法
(3)調査事項
ア.調査対象者の基本属性に関する事項 カ.日常生活の行動・意識に関する事項
イ.基本的生活に関する事項 キ.日常的楽しみに関する事項
ウ.衣類に関する事項 ク.日常生活情報に関する事項
エ.食生活に関する事項 ケ.その他
オ.住宅に関する事項
(4)調査期間
平成 26 年 12 月 4 日(木)~12 月 26 日(金)(投函締め切り 12 月 18 日(木))
※12 月 18 日(木)に、未投函者に対して回答依頼のハガキを送付している。
(5)標本抽出方法 層化二段無作為抽出法
(6)回収結果 有効回収数 3,893 票(64.9%)
(返戻数 38 票、不完全回答 9 票、抽出閲覧時情報と回答者の相違 22 票)

最も重要な点は”(1)調査対象 全国の 60 歳以上の男女 6,000 人”ということで、質問している相手は、あくまで60歳以上の方々。決して20歳代の意見は反映されていません。

問3 あなたは、何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいですか。この中から1つ選んでお答えください。

“収入を伴う”と質問票で明文しています。この一文からは「社会とのつながりを持ちたい」「社会に貢献したい」というような理由ではなく「生活費が足りない」「贅沢な生活のために」という経済的な理由で回答してもらうように誘導する意図が読み取れます。

解釈はさらに注意したほうがいい

ちょっと驚いたことに、この平成26年度高齢者の日常生活に関する意識調査の集計結果を見ると

(5)就労希望年齢(Q3)
何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいか聞いたところ、「働けるうちはいつまでも」28.9%が最も高く、次いで、「65歳くらいまで」、「70歳くらいまで」がともに 16.6%、「仕事をしたいと思わない」10.6%などの順となっている。

な?30%以下じゃないか!

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くまひろ

実は平成29年版高齢社会白書では注意書きがついており

(注)調査対象は、全国60歳以上の男女。現在仕事しているもののみの再集計。

なんと、60歳以上だけではなく、”現在仕事をしている”という大きな属性が加味されています。平成26年度高齢者の日常生活に関する意識調査で”現在仕事をしている”方の人数は1,356人とのことのようですので1,359/3,893=約35%に絞った中での結果です。

てんさん的解釈

この「働けるうちはいつまでも」働きたいヒトが約4割!は、その調査母集団をしっかり読んでみると

全国60歳以上の男女

現在仕事しているもののみ

収入を伴う仕事

ということですので。

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経済的な理由で満たされていないので「働けるうちはいつまでも」働くしかない・・・

という、困窮した高齢者が多くいるの現状を物語った数値と解釈するほうが正しそうです。

なので、年金だけでは生活を完全にカバーできない以上働きたい方にいつまでも働いてもらえる環境の整備が重要!という論理につなげるのは悪くなさそうですが。

”約8割が高齢期にも高い就業意欲を持っている”という、あたかも

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俺たちはまだまだ現役としてバリバリで働きたいんだ!

という、ギラギラした高齢者がたくさんいるような印象をもたせる、平成29年版高齢社会白書のまとめ方は適切ではないと思います。

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てん

マスコミならともかく、政府側がのまとめ方としては中立性に欠けるように思います

若い方のご意見

ところで、あの20代の社会人数年目の若手サラリーマンの”定年でスパッと”の感覚はどうなのでしょうか?

日本財団の『18歳意識調査 第4回テーマ「働く」について』が参考になりそうです。

20代じゃないやん

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くまひろ

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てん

そこはもう勘弁して。ここからはあくまで参考情報だから

日本財団『18歳意識調査 第4回テーマ「働く」について』

この調査は下記のような調査になっています。

調査対象 全国の17歳~19歳男女
回答数 800※
調査除外 下記の関係者は調査から除外
印刷業・出版業/マスコミ・メディア関連/
情報提供サービス・調査業/広告業
実施期間 2018年10月26日(金)~10月28日(日)
調査手法 インターネット調査

※補足:800人は男女、17,18,19歳で均等にバランスを取って回答を回収しています。

インターネット調査は、日常的なインターネットメディアへの接触の有無に依存したバイアスを含むのですが、ことデジタルネイティブ世代である17-19歳が調査対象ということであれば、気にするほどのバイアスはないような気がします。

「65歳」+「65歳未満」で42.6%

要約を抜粋すると

何歳まで働きたいか

「わからない」※という回答以外では、「65歳」(23.6%)が最多/次いで、「65歳未満」(19.0%)が多い
• 「65歳」の理由は、「65歳までが体力的にも能力的にも限界」「働く意欲がなくなりそう」など体力面や精神面の限界を心
配する声と、「年金がもらえるまでは働く」「貯蓄をするため」など金銭面についての不安が理由としてあがる。

※補足:「わからない」の回答は29.4%

「80歳以上」という回答は10.3%ということで、自由筆記の内容を読んでみるとこの10%は経済的な理由ではないことが伺えました。

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てん

20代へのアンケートではありませんが、冒頭のサラリーマンの「定年でスパッとやめたい」は、こと若い方の間では相当数の同意が得られそうですね

まとめ

さて、振り返ってみると、冒頭の会話が誤認のもと行われていることがわかります。

俺も俺も、でも世の中には仕事大好き人間が思ったより多いんだな~

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サラリーマン1

17-19歳の10%は確かに「(経済的理由に関わりなく)生涯働きたい」と言っているわけで、一定数”仕事大好き人間”がいるのは事実でしょう。しかし

「働けるうちはいつまでも」働きたいヒトが約4割もいるんだって

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サラリーマン1

というのは、その母集団をよく見てみれば「経済的理由で生涯働きたい」が相当数含まれた上での約4割で有ることがわかります。

彼らの会話は、誤解の生じやすい(誘導した)アンケート結果要約をもとに、まさに誤解のもとで行われた会話であることがよくわかりました。

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てん

悪いのはデータを正しく読めない方というより、正しく伝えられないほうだと思います

故意に結果を捻じ曲げて伝える輩もいるから、騙されないだけのリテラシーも必要やな

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くまひろ

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てん

そのとおり!

でわでわ

 

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